2005年05月05日

ジャンクDNA

日経サイエンスが、この半年の間、何回にもわたって、「崩れるゲノムの常識」という特集を組んでいる。
 
これが、本当に面白い。ワクワクする内容だ。
 
セントラルドグマという生物学の常識が崩れたのかもしれない!という内容を、詳しく特集している。
 
そもそも、僕は、セントラルドグマが大嫌いだ。
 
このセントラルドグマというやつは、「遺伝情報は、DNAからタンパク質へのみ流れ、逆方向には流れない」というものなのだが、どこが嫌いかというと、情報が物体のようにイメージされているところだ。
 
というわけで、「何々遺伝子」という表現も同様に嫌いだ。
 
生物のもう一つの情報蓄積装置である脳では、記憶が1つのニューロンに蓄えられているとはもはや考えられていない。
 
かつて、考えられていた「おばあちゃん細胞」の存在は、すでに否定されているはずだ。(その細胞が死ぬと、おばあちゃんを忘れてしまう)
 
ところが、遺伝情報に関しては、「おばあちゃん細胞」と同じ論理を振りかざしているところがおかしいと思うのだ。
 
僕には、「肥満遺伝子」と「おばあちゃん細胞」は同じように聞こえる。
 
遺伝情報も、記憶と同じようにネットワークの中に織り込まれているのではないかと、ずーと以前から思いつづけてきた。
 
ここにきて、やっと、僕が共感できるストーリーが提示された。
 
それが、ジャンクDNAだ。
 
ジャンクDNAは、決して「ジャンク」ではなく、遺伝子の発現などをコントロールする役割をしているらしいのだ。そして、遺伝子=タンパク質をコードしているDNAの量は、生物の複雑さとは必ずしも一致しないが、ジャンクDNAの量は、生物の複雑さと強い相関があることも分かってきたらしい。
 
情報を構造化するためのツールがジャンクDNAの中に詰まっているらしいのだ。
 
つまり、言語に例えれば、
タンパク質は名詞だ。ジャンクDNAは、助詞や助動詞だ。
 
名詞よりも、助詞や助動詞の方がむしろ、文章の意味に与える影響が大きいこともあるだろう。
 
さらに、ジャンクDNAにコードされている情報が発現するかどうかに関係するのがDNAのメチル化だというのも重要だ。(この辺も、とても面白い)
 
これは、言ってみれば、ジャンクDNAに、メチル化という「ふた」がついて、発現を押さえているということだ。しかも、この「ふた」は、環境からのアクセスで外れたりするらしい。
 
つまり、DNAと環境との相互の情報のやり取りがあると考えられるというのだ。
 
このような、最新情報を踏まえて、ダーウィンの進化論を超える新しい生命観が生まれてくれればいいなあと、僕は願っている。
 
個が、その集合体である社会の中で自由競争し、序列化されるというダーウィニズム的社会観は、元をたどれば、セントラルドグマに行き着く。
 
現在、社会のパラダイムに与えるダーウィニズムの影響は大きいと思う。
競争社会は、「自然の論理だから」という一言で正当化される。
 
その「自然の論理」を根底から変える可能性を、僕は、ジャンクDNAに見ている。
 
今年も、ジャンクDNAの動向に目が離せない。
 


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