2007年11月11日
RNAキャッシュ
最近、「RNAキャッシュ」というものについてのnatureの論文を読みました。
DNAを介さずに、RNAが直接、次の世代に情報を伝え、DNAに生じた変異を、
RNA→DNAと上書きして修復する仕組みがあるらしい
という衝撃的な内容でした。
これが事実なら、生物学の基本原理である「セントラルドグマ」が、破れている
ということですので、とても大変なことであり、エキサイティングなことです。
DNAの2重らせん構造を発見したワトソンとクリックは、「セントラルドグマ」という
ものを唱えました。
遺伝情報が、DNA→RNA→タンパク質と一方向だけに伝わり、逆向きには伝わらない
というものです。
僕は、かつて大学院で、複雑系の立場から生命科学を研究していました。
自己組織化という物理現象の結果として、生命が誕生するはずだと思っていました。
ところが、そこにそびえたつ壁が「セントラルドグマ」でした。
自己組織化の立場から、生命を論じると、生命は環境とうまく折り合いをつけるもの
でなくてはなりません。
ところが、分子生物学的な真理として、「環境からDNAへの情報の流れは存在しない」
という「セントラルドグマ」があるので、自己組織化の立場から何を言っても、
錦の御旗である「セントラルドグマ」の前に、跳ね返されていたわけです。
それから10年ほど経ち、セントラルドグマにいろいろとほころびがあることが
分かってきました。
逆転写酵素の発見によって、RNAからDNAへの情報の流れが存在することが、
分かってきて、逆向きの情報の流れもあるということになってきました。
最近、調べていた「RNAキャッシュ」は、セントラルドグマに、かなりおおきな
ほころびがあることを示す内容です。
DNA以外の経路で、遺伝情報が祖父から親、孫へ伝わり、親の代にDNAに生じた
突然変異を、逆に修復する仕組みがあることが分かったらしいのです。
その研究者は、RNAが遺伝情報を運んだのではないかと推測し、「RNAキャッシュ」と
いう名前をつけています。
僕は知らなかったのですが、2005年にNatureに発表された論文は、かなり話題になって
いるそうです。
これが事実なら、セントラルドグマは、かなり大きく揺らぎます。
なかなか面白くなってきました。
生物学が、根底から大きく変わるかもしれません。
↓Natureの論文の日本語の解説はこちら
http://www.mypress.jp/v2_writers/miyu_desu/story/?story_id=974276









